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ではヘッドを外していく。
組む時にガスケットにはオイルだったかグリスだったか忘れたが、油分を薄く塗って馴染ませておいたので軽くスクレーパーを当てるだけでペロンと剥がれた。5年間一回も開けていないのに。
規定のトルクできちんと締めておくのが前提だけど、今までオイルが漏れたり吹き抜けたりしていないのでオイル塗り作業はお勧め(自己責任で。賛否両論なのは理解してます)
乾いたガスケットに液ガスを塗りたくってるような動画をたまに見たことがある。
液ガスまでいかなくても新品のまま組んでいるのがほとんどだと思う。
それが正解なんだろうけど、ああすると年月が経ってから分解したときに面倒な事になると思う。
オイル塗りのガスケットは、なんなら再利用が出来るぐらいの状態でガスケットが取れる(潰れてて厚みが減ってるから良くはないんだろうけど)
今回手持ち部品がある物はとりあえず全部交換するけど、中華ガスケットは純正と違っていつ入手不可になるかわからないのでお古のガスケットも保管しておく。
破れてないから市販のガスケットシートを使って切り出すこともできるだろうし。
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ガスケット剥がし作業が不要なのでその点は楽ちん |
ヘッドを取ってみて…驚いた。
ガスケットは吹き抜けもなくて正常だったが、バルブの汚れが両方ともすごいことになっている。
これは…カーボン噛みの寸前だったか!?
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危険な状態。自分の乗り方が悪かったのだろうか…? |
ピストン側も結構な汚れ具合。
下のバルブリセスがカーボンの堆積でほとんど埋まってしまってる。
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上は全然綺麗…でも、下がガビガビ! |
なんだかバルブが溜まったカーボンに当たっていたような跡も見える。
ちょっと湿気の有るカーボンなのでやはり結構オイルが回ってきていたようである。
このあとピストンリングも確認したが、こちらはほぼ異常なし。
ということはピストン側からのオイル上がりではなく、ステムシールからの下がりが原因だったか。
もう少し早めのスパンでステムシールは交換すべきなのだな、と学習。
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ヘッドカバーの内部は綺麗 |
ロッカーアームは当たり面がすり減っていた。
これぐらいは大丈夫だと思うが部品があるので新品に交換する。
ステムシールは純正新品を使用。
燃焼室を掃除して新品バルブをコンパウンドで摺り合わせして組み込む。
バルブ類は再使用しないからかなり楽したが、バルブシート面がカーボンで結構傷んでいたので念入りに摺っておいた。
給排気バルブだけは掃除しての再利用が面倒すぎるので、次回のために新品を買い足しておこうかな。
シリンダーも下ろしてピストンを見る。
横型の宿命なのかシリンダー上下部に当たるピストン側面には薄い縦筋が多い。
稼働中のエンジンからは特に首振りしてるような音はしていなかったが、常に微妙に振っているのだろう。
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これぐらいの縦筋は仕方ない範囲だと思う… |
頭のカーボン汚れは酷いものだがピストンリングはするすると動き、張力も十分残ってる。
溝への固着は見られなかった。
ただオイルリングの下方にあるオイルの吹き出し穴?は数か所詰まっていた。
ピストンピンも抜けないほどではないが、表面は少し荒れてた。
でもこれぐらいなら洗えばまだ使える状態と思う。
外したシリンダーを見ると摺動面はピカピカになってて多少筋はあるものの、まだクロスハッチが残ってる。
新旧シリンダー。
52.4mmから54mmへ。
少しだけボアアップ。
コンロッドの縦ガタは全く無かったのでホッとした。
確か縦方向は揺らしてみてちょっとでもガタ出たらクランク丸ごと交換!(大端部のニードルベアリングを交換できるほどの環境が無いため)と、聞いてたので助かった。
ピストン裏側はうまく潤滑できていたようだ。
ピストンピンのはまる小端部には傷はほぼ無いように見える。
14mmピストンピン。上が新品。下が使用済。
ここで問題発生。
ノックピンが一箇所だけ錆びて固着。
スタッドボルトを外してドライバーをガイドにして潰さないように抜こうとしたが、無理だった。
仕方ないのでパイプレンチでじわじわと抜いたが、案の定、潰れてしまった…。
ノックピンは7mmの新品在庫があったので交換できた。
オイルを塗っておくが、多分この辺はまた錆びると思う。仕方ない。
あとはオイルラインの新品Oリングなどを忘れないように入れて組み戻す。
シリンダーにピストンリングを付けてピストンクリップを片側だけ付ける。
そしてピストンリングの部分を事前にシリンダーにはめた状態でスタッドに差し込んで、コンロッドの穴に合わせてピストンピン・ピストンクリップを取り付けて根本まで差し込むとリングコンプレッサーが無くとも楽に組める。
どこに擦っているのかよく分からない汚れたカムスプロケットや留めボルトもせっかく新品があるので換えた。
歯は特に傷んではいないが、まあ、気分気分。
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なんでか分からないがスプロケットが汚い… |
カムチェーンは伸びも無く正常なようなのでそのまま使う。
合いマークもぴったり合う。
聞いたところによると、チェーンの伸びる原因はオイル中に溶け込んだカーボンの微粒子がチェーンより硬いので徐々にピンをすり減らして、結果伸びてしまうらしい。
まめなオイル交換しか対策がない。
忘れないうちにバルブクリアランスを調整しておく。
余談だがデコンプレバー付きカムのバルブクリアランス調整はデコンプレバー無しとは違って少し特殊なので気を使う。
上死点を出す時にわずかでも逆転させてしまうとロッカーアームがデコンプカムに乗り上げてしまい、クリアランスをきっちり合わせていても始動したら一発で狂う。
プラグを外しておいてフライホイールをじわじわと回転させてTマークへと合わすしかないが、そうやっていても過去に何度も失敗している。
始動してカチカチいいだしたら大抵これが原因。
正直言ってデコンプの恩恵をあまり感じないので、次回は取り外してしまおうかとも考えてる。
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シリンダーの塗装が妙にテカテカで安っぽい… |
ヘッド4本と側面のボルトを軽く締めた状態で手で10回ぐらいキックペダルを押してクランキング。
その後でトルクレンチで本締めして終わり。
(ピストンとシリンダーのセンター合わせのつもり。自分はなるべく馴染ませるように毎回この儀式をやるが、やらない人も多い?)
全部組めたらいよいよ火入れ。一発でかかった。
気のせいか妙なメカノイズが消えてだいぶ静かになった感じ。
しばらくアイドリングで放って置いた。
以前のようなオイル臭さも無いし、マフラーからの一発一発の排圧もバッチリなのでひとまず安堵する。
エンジンも温まったので最後に圧縮圧力を測定。
結果は155psi。約10.9kg/cm。
作業前後でほとんど変化は無いようだ。
一般的な13kg/cm前後ぐらいになるかと思ったが甘かった。
やはり元々低圧縮なエンジンなんだな。
一生懸命作業したのにちょっとがっかり…。
でも試走してみたら間違いなくトルク感がアップしてました。
嬉しい。
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作業後 |
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作業前 |
【作業後の考察】
外したピストンリングもまともだったし、シリンダーも綺麗だったのを考えると元々このエンジンはこれぐらいの数値で正常なのだろうと考える。
何にしてもステムシール以外は50000km走ったぐらいじゃなんともなかったのが少し驚きである。
リーファン内製エンジンは自分が思ったよりずっとタフらしい。
でも今回、「どこの馬の骨シリンダーキット」に交換してしまったので今後どうなるかは不明である。
なので一応外した52.4mmのシリンダー類は今後不調になった時のために捨てずに洗って保管しておこうと思う。
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交換前のピストンリングをシリンダー内にあてがってみた。 ほとんど減っていない。 |
多分ステムシールを換えてバルブ周りを掃除するだけで今回のオイル食いの症状は収まったのだろう。
ある程度カーボン掃除できてすっきりしたし、腰上の点検が出来たと思えば、まあいいか…。